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【旬の研究シリーズ】
”わからないを残さない”病原体検査

「こんなこといいな、できたらいいな」とドラえもんの主題歌にあります。私たちは、感染症で苦しんでいる動物たちを検査して、病原体を明らかにすることで治療につなげれたらいいな、といつも思っています。しかし、それぞれの動物に感染する病原体の種類が多いので、なかなか原因の病原体の特定まで至らないのが現実です。

・牛、豚、犬、猫に感染する病原体の網羅的PCR検査法をつくりあげた
・次は鶏の検査法だ
・次世代シーケンサーを使って未知の病原体も検出できる

私たちはまず牛を救うことに決めました。そして、牛に感染する50の病原体(ウイルス、細菌、カビ、原虫)を一度にPCRで検出できるシステムを作りました。50の病原体を調べれば、目の前に病気で苦しんでいる牛がどの病原体に感染しているかわかるだろう、と考えていました。しかし、現実はもっと過酷です。牛農場の現場には新しいウイルスがいっぱいいます。新しいウイルスの全部が強い病原性を持っているわけではありません。病原性が弱いウイルスもいっぱいいます。でも、私たちは「わからないを残さない」検査を実現すると決めました。だから、片っ端から遺伝子を調べていくことのできる次世代シーケンサーも使って、未知のウイルスも発見しているのです。

感染症センターに所属する歴代の学生さんたちに順番にPCR検査法を作ってもらい、今では牛、豚、犬、猫の検査法ができました。そして、いま博士課程の学生さんが鶏の検査法を作っています。これらの方法は麻布大学やタイの研究機関でも使われていて、そこそこ有名になりつつあります。私たちの目指すのはこの検査法が世界基準になることです。

ちなみに、牛の下痢検査法の名前は、Detection system of microbes for bovine diarrhea by real-time PCRを略して、dembo-PCRと呼んでいます。NHKで大人気だった「おじゃる丸」に登場する「デンボ」みたいに親しみやすい名前にしました。豚はporcineなのでdempo-PCR、犬猫はcanineとfelineなのでdemCAFE-PCRとオシャレな名前になっています。

(共同研究:麻布大学、鳥取県家畜保健衛生所、岐阜県家畜保健衛生所ほか)