【旬の研究シリーズ】
ハリネズミだってウイルスに感染する
ハリネズミってかわいいですよね。でもトゲがいっぱい生えています。ドイツの哲学者ショーペンハウアーは、そんなハリネズミ同士の恋愛事情を「ハリネズミのジレンマ」と表現したとか、しないとか。この言葉の源は「ヤマアラシのジレンマ」でしたね。Every Little Thingの「ハリネズミの恋」も有名です。
・軽い風邪症状のハリネズミから新種のアデノウイルスを発見した
・スカンクを殺してしまうアデノウイルスの仲間のウイルスだった
・ハリネズミアデノウイルスの性質を解析中
どんな敵でも味方でも防御してしまいそうなハリネズミですが、ウイルスに感染して苦しむこともあるのです。私たちは軽い風邪症状を起こしたハリネズミからアデノウイルスのゲノムの断片を見つけました。アデノウイルスはヒトにも風邪を起こします。夏にはプール熱を起こすことでも有名ですね。
このウイルスのゲノムを解析すると、スカンクに感染するアデノウイルスの仲間だったことがわかりました。スカンクアデノウイルスはスカンクを殺してしまいます。しかし、ハリネズミアデノウイルスはハリネズミを殺すことはありません。私たちはハリネズミアデノウイルスがどのようにしてハリネズミに病気を起こすのか、そのメカニズムを研究しています。そして、培養細胞にハリネズミアデノウイルスを感染させる実験から、病原性のメカニズムが明らかになりつつあります。
この研究の面白さは、スカンクアデノウイルスとハリネズミアデノウイルスの病原性の違いがどのウイルス蛋白質に規定されているのかを明らかにすることです。2つのウイルスのゲノムは99%一致しているのです。たった1%が生きるか死ぬかを決めているのかもしれません。あるいは、ハリネズミアデノウイルスをスカンクに感染させるとスカンクが死んでしまうのなら、スカンクのウイルス感受性に問題があるといえます。
ハリネズミもスカンクもウイルス感染から守りたい、そんな気持ちで研究を進めています。
(共同研究:麻布大学、田園調布動物病院)